どうも自家焙煎珈琲パイデイアです。「焙きながらするほどでもない話」第29回です。
今月始め、桜を見に京都まで行って参りました。
仁和寺、醍醐寺、東寺、と京都の桜と言ったら、みたいなところを回って、趣味の仏像を拝観して、気になっていた珈琲屋さんにお邪魔して、と中々に詰め込んだ旅でした。
旅行が決まると、まず先に決めるのは宿、その後、その宿の近くを「自家焙煎珈琲」というキーワードで検索をかけます。
これが私の旅行前の下調べです。本当は「家系ラーメン」というワードも検索しておくんですが、まあ、いいですね。
宿を決める時は部屋はもちろん、お風呂やサウナなど、そりゃ、もう予算の中でゆっくり豪勢に過ごしたいですから、色々見て、天然温泉があって、露天風呂があって、貸切風呂に、外気浴が気持ち良さそうなテラスがあって、なんて色々みるわけです。
そうやって決めても、いざ、旅に行ってみると、まあ、宿で過ごす時間なんてありゃしない。朝も早くから喫茶店に出かけて、一日中出歩いて、夜も遅くに帰ってくる。
ドーミーイン系列なんて、せっかく「夜泣きそば」とかお風呂上がりのアイスとかいろんなサービスが充実しているのに、というよりも、それがあるからその宿にしているという節すらあるのに、帰ってその時間までに宿に帰らないといけないという時間の縛りがわずらしくなるほど。
半日でいいから、宿でグダグダするだけの余裕のある旅工程が組める大人にそろそろなりたいものです。
私の今回の旅の一番のお目当ては「浄瑠璃寺」の拝観です。
ここはね、本当におすすめです。
まず、歴史的にかなり貴重な仏像が現存しているのに、その認知度の低さから参拝客は少なく静かで、庭の作りがこれまた素晴らしいのです。
ただ、京都駅から電車とバスを乗り継いで2時間弱という山奥にあることが一つ難点。でも、本当におすすめです。
浄瑠璃寺の本堂に安置されているご本尊は9体の阿弥陀様。なんで阿弥陀様んのか、なんで9体なのか、この理由がすごく面白いんです。
阿弥陀様というのは、人が死んだ後に来世に導いてくれることでお馴染みで、9世紀ごろブームになった如来様です。
9世紀というと世は藤原道長、頼道親子の全盛期。もう、藤原氏に生まれないとまともな官職なんか得られない、幸せになんか暮らせないわけです。
そこで当時の藤原氏以外の貴族、藤原氏の中でも中心に生まれなかった貴族は、現世での出世を諦め、来世に期待を込めて阿弥陀様を信仰します。
それに加えて、1052年というのは、釈迦が死んでから2000年経過する「末法」の世という、それはそれはもう北斗の拳みたいな(読んだことはないんですが)時代が来ると恐れられていたわけです。
みんながこぞって来世に願掛けます。
そんな時代にぴったりの阿弥陀様はお迎えの時に上品上生から下品下生まで9通りパターンがあります。
つまり、今世での生活を、中を含めた上の上から下の下まで9通りに分類するのです。
さて、困るのは信仰する私たちの方です。実際に死んでみるまで9通りのうち、どの阿弥陀様が迎えに来るかわからない。
「私はこれだけ仏道に邁進したんだから、上品上生の阿弥陀様だろう」と思って、実際、ぽっくり、その後に、やってきたのが上品中生なんてこともあるわけです。
しかも阿弥陀様がちょっとケチくさいところは、上品上生だと思って信仰していたのに、いざお迎えにきたのが上品中生だった時、ずっと信仰していた上品上生のご利益は上品中生には適応されないわけです。
ファミマで貯めたTポイントがTSUTAYAで本を買う時に使える現代がどれだけありがたいことか。Tポイント観音様様です。
閑話休題。
こうなると、来世を幸せに生きたいと願う平安貴族は、1/9のギャンブルに出るわけです。そもそも、そのギャンブルに勝てるくらいの幸運の持ち主ならば、現世で藤原氏に生まれてるよ、とも思うわけですが。
そこで考えたのが、じゃあ、9体の阿弥陀様を一堂に並べて、いっぺんに拝んじゃおう、という考え方です。
私も中学生の時に考えたことがあります。いっぺんに儲けちゃおう、という発想。
ロト6で全ての通りを買ったら、一等前後賞全て当たるんだから、丸儲けじゃないかというのが、私が考えたことでした。
1〜43の数字を6個選ぶ、ということは43×42×41×40×39×38ということで、43億8944万6880通りです。一口200円ということは、8778億8937万6000円の元手が必要になります。こんな元手がある人は、もう2億円に夢なんか見ませんよね。
平安貴族も然りです。
9体の阿弥陀様を造立して、それを安置するお堂を建てれるくらいの財があるのなら、もう今世幸せでしょうよ。
しかし、平安貴族はそれをやってのけたのです。しかも、今でこそ、9体全てが現存するのは浄瑠璃寺だけですが、結構方々にあったらしいのです。
なんと強欲なことか。さすが、谷に落ちてもきのこを拾ってくるだけのことはあります。恐るべし、平安貴族。
そもそも阿弥陀様もそれでいいんですかね。
9体並べちゃえ、ってかなりいい加減じゃありません?
しかし、仏の信仰というと堅苦しい感じがしますが、そんなちょっととんちみたいなことも許容されていると思うと、ちょっと親近感が湧いてきません?そんなところで、私は浄瑠璃寺というお寺が京都で一番好きなお寺です。
薬師如来が本尊の五重塔が東側、つまり、この世、池を挟んで西側に本堂の阿弥陀様、つまり、あの世という西方浄土を再現した庭も素晴らしいものです。
阿弥陀様が信仰される由来といい、9体の並んだいい横着な理由といい、それくらい肩の力を抜いていられたらいいもんだねぇ、と山奥の静かなお寺で深呼吸してきた、京都旅の話でした。
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