どうも自家焙煎珈琲パイデイアです。「焙きながらするほどでもない話」第28回です。
こんなところで報告するのもなんですが、本職を3月末で退職いたしました。
お世話になった方もいくらかお読みでしょうから、この場を借りて、と言ってもこの場も自分自身で用意しているので借りるものでもないのでしょうけど、お礼申し上げます。
辞めるとなってから、自分でも充足感を感じるくらいの仕事をしてきたことを再確認させていただきました。
職場の方もご贔屓のお客様も寂しがってくれ、私の退職後の職場環境を憂うことで、間接的に私の仕事を讃えてくれたり、と大変に勇気づけられました。
いよいよパイデイアをベースにやっていこう、と背水の陣な訳です。やだ、選挙の街頭演説みたいなこと言っている。
退職を決めて公表してから、皆さんからたくさんのはなむけを頂くのです。
いつしかそうやって、まあ、言ってみればチヤホヤされて、寂しがられることに、快感を覚えて、いい気になっているような自分を見つけた時には、もう、穴があったら入りたいような恥かしさでした。
これから、新しく自分でやっていこう、と決めた時に、今までやってきたことにすがるような、それに満足して浸っているような自分がどこか情けなかったのです。
私がしてきた仕事を否定するわけじゃありませんが、それでも、これから美味しい珈琲を焙いて、皆さんに喜んでいただくのは、また違う話です。
今までの本職でやってきたことが私の中でいくらかの血肉にはなっていますが、それに慢心していては、珈琲で生計が立ちいきません。
なんだか改めて、自分自身に鞭を打つきっかけとなった気づきでした。
それでも皆さんがそうやって送り出してくださることがに、感謝し、珈琲に精進して参りたいと思います。
本当にお世話になりました。
それはそうと、送別の品に自家製の消しゴムハンコをくれたアルバイトの子がいました。
彼を採用面接した時のことはよく覚えています。
面接にきた時、彼はかなり優秀な高校の3年生でした。3年生ということで、進学について質問すると、彼は卒業後は大学に進学せず、おそらく彼の学校で大学に進学しない生徒なんて1割もいないだろうに、「消しゴムはんこ職人」になりたいです、と堂々と答えたのです。
こいつは面白いやつだ、と結構、本気で思いました。
おそらく、器用ではなさそうだから、仕事はそんなにできるようにならないだろう。でも、かなり面白い。こういう子がいる職場って、他の学生アルバイトにも面白く作用するかもしれない。
上長はちょっと難色を示しましたが、私は強く推しました。
私の予想は良くも悪くも当たりました。つまり、正直、彼はそこまで気の利く仕事ぶりを最後まで発揮してくれませんでした。しかし、周りにいい影響を作用する、という予想も大当たりだったのです。
彼が仕事で何かミスをすると、みんなが率先してカバーするようになり、みんなが彼の仕事ぶりを気にかけるようになりました。
その視線は、いつしか彼だけでなく、新しく入社する新人さんにみんなに注がれるようになります。
結局、彼は高校卒業後、料理の専門学校に進み、勉強しています。卒業後は修行して、自分でお店を開くでしょう。彼の人間性や誠実さは、彼の不器用さをカバーして、余るほどの魅力があります。きっと彼の店はうまくいくでしょう。
その時にはパイデイアの珈琲を仕入れるように言ってあるので、私も安泰です。
彼の採用を決断できたことは、私にとって自信になりました。
仕事を器用にこなせる人ばかりを採用するのではなく、職場環境にいい方向に作用するアルバイトの採用もかなり重要です。しかし、これは目先の職場環境の安定だけを求めていてはできません。
君は人一倍、私の退職を悲しみ、私に感謝を伝えてくれたけど、むしろ、私の方が君から勉強させてもらったことはたくさんあるんだ。
君はこの先、その不器用さから人一倍怒られるかもしれない。でも、君は自分の不器用さとしっかり向き合って、努力をする人間だから。その姿はこの先、君の周りの人間を大きく動かすと思う。だから、君はそのまま頑張んなさい。
ちなみに彼は私が大好きで敬愛してやまない、桑田さんのイラストを消しゴムハンコにしてくれました。このクオリティタルや、さすが!
これでおまんまを食べようとしていただけのことはあります。
ありがとうね、本当に。君がこれを読んでいるか知らんけど。(笑)
〈information〉
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今週は芥川賞受賞作「東京都同情塔」について書きました。ぜひ、こちらも合わせてご一読くださいませ。
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気が向いたら、こちらもぜひ聴いてみてください。